剱岳(標高2,999m)は、北アルプスの中でも最も険しい山容を誇り、「岩の殿堂」と呼ばれる日本を代表する名峰です。その姿は、季節や光の具合によって全く異なる表情を見せます。
里の暮らしを見守るようにそびえる冬の剱岳、快晴の空に際立つ岩稜の鋭さ、新緑と残雪が重なる春の風景、そして夕暮れに茜色に染まる幻想的な姿――。どれも同じ山でありながら、時間と季節が織りなすドラマによって変幻自在に姿を変えます。
このシリーズは、剱岳が持つ 「厳しさ」と「美しさ」 の両面を遠景からとらえ、人と自然との距離感を示すとともに、山岳信仰の対象として人々の心に息づいてきた存在感を表現しています。
剱岳は天候が変わりやすく、刻々と光が移ろいます。特に夕映えは数分間しか見られないため、事前の準備と粘り強い待機が必要。
冬は雪と青空のコントラストを強調。春は新緑と残雪の対比を生かすことで「季節の境界線」を写し取ることができます。
手前に集落や森林を入れることで、山の大きさや生活との距離感が際立ちます。近景で岩稜を切り取れば、剱岳特有の険しさを強調できます。
剱岳は麓の平野や里山からも望めるため、撮影場所ごとに全く異なる印象を与えます。特に富山平野や黒部川流域からの眺望は、剱岳と人の暮らしを一枚に収められる代表的な構図。
澄み切った青空の日には岩肌のディテールをくっきり。逆に霞や雲のある日には山の神秘性を強調することができます。